「小学生の頃から、宝塚やミュージカルのような、歌って踊る生の舞台がすごく好きでした。大学で本格的に演劇に関わるようになって、演者がもっと魅力的になるには、もっと役に近づくにはと考えたときに衣装やメイクを整えることの大事さに気づいて、ヘアメイクの学校にもWスクールで通い始めたんです。そしたらヘアメイクの方にハマってしまって。ヘアメイクになろうと決意しました」

卒業後はテレビ局のヘアメイクとして働き始めたが、もともとファッションも好き、生の舞台も好きだった岡田さんが、次に目指したのはニューヨーク。25歳の時でした。

「ニューヨークでは、コレクションに参加させてもらったり毎日が刺激的。トップクラスのヘアメイクやスタイリストといったスタッフの中で、いろいろな経験を積んで30歳で日本に拠点を移しました」

日本に拠点を移してからは、主に雑誌や広告、人気女優のヘアメイクを担当している岡田さん。駆け出しの頃と今。年齢や経験を重ねるにつれ仕事への向き合い方にも変化が出てきたという。

「7年前にサーフィンを始めて、ウィンドサーフィンを始めたのがちょうど5年前。その頃の私に必要なものは“17歳の夏休み”だった。サーフィンやウインドサーフィンを始めて、行きたい旅先や人との出会いもさらに広がったのと、休むことが成長だと思うようになって、自己肯定感も上がりました。仕事で褒められることにはどこか慣れてきていたけれど、例えば今日も無事に怪我なく一人で海から戻ってこられたとか、ヘアメイクとは全く関係のない思考で、自分の成長を感じられることがすごく楽しい。海に出ると、今日も富士山綺麗だなとか、クラゲが増えたなとか、目に映ることだけが頭に入ってくる。思考から離れる作業を練習しないといけないというか、思考に惑わされてイライラとか怒りが込み上げてくることもあるけど、それを離した時にに何を感じるかを大事にしたいと思うようになった。今すべてにおいて良いバランスを作れているのは、100%サーフィンのおかげです」

サーフィンを始めて、変わったのはメンタル面だけではない。自身のケアだけでなく、環境への目線も変わった。

「ニュートラルでいたいんです。私が自分自身にあまりメイクをしない理由は、この人こういうメイクするんだろうなっていう先入観を与えたくないから。だからこそ肌も髪もケアをすごく大事にしています。ずっと続けていることは頭皮ケア。必ず毎日お風呂に浸かって、頭皮マッサージ。頭皮環境を整えることで髪が健やかになるだけじゃなくて、肌や血行も良くなる。頭皮を毎日触っていると自分のコンディションがわかるから。そうやって日々底上げをしておくと日焼けや海水で強い刺激を受けてもある程度は大丈夫な気がしています。それが環境にも配慮されていたらもっと良いですよね。自分で選択できる時は洗剤、ケア用品、食べ物など、できるだけ環境に優しいものを選ぶようになりました。何事も積み重ねです。それが結果的に良い方向へ導いてくれる気がするから」

ヘアメイクのゴールと同じように、暮らし方や生き方も一つではない。常に自分に問いかけ向き合いながら、目指す道を選択し歩んできた岡田さんの次なる選択とは。

「あまり大きな変化は求めていなくて、良い意味であまり考えてないです(笑)。なるがまま、なすがままに生きていきたい。東京も好き。だから移住したいとかは考えてなくて、身軽に転々とできたら良いな」

時代や人の心が変わるように意図せずとも自然と色々なことがスピード感を持って変わって行く今。だからこそ岡田さんは変えたくないものを大事にしていきたいと言う。それが人の手。zoom撮影、ヴァーチャルモデル、レタッチなど技術は進歩しても、人の手で行うヘアメイクは絶対に無くならない。ウィンドサーフィンも機械に頼らず自然と人の手でできる遊び。だから惹かれ、もっと自分の可能性を試したくなるのかもしれない。