Be honest with myself
Vol.13 素直な気持ちと寄り添う
/ 宗広裕美(ロースター・バリスタ)
Be honest with myself
Vol.13 素直な気持ちと寄り添う / 宗広裕美(ロースター・バリスタ)
YUMI MUNEHIRO
Roaster, Barista

「毎日すごく頑張ったり努力したりしているつもりはないけれど、日々の積み重ねがあるからこそ、今こうしていろいろなことが芽吹いていると思うんです」

世界一の女性バリスタを送り出すというコンセプトのもと誕生したLATTESTで、バリスタ兼マネージャーとして活躍する宗広裕美さん。彼女自身の強みについてこう話している。

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大学卒業後、医薬品関係の会社に就職。20代後半に差し掛かり新たな道を探していたところ、たまたま入ったLATTESTが彼女の人生を変える場所になった。

「友人とふらっと入った表参道のLATTESTで、気持ちのよい接客を受け、心から美味しいと思えるコーヒーを飲んだことが、当時の私に強烈なインパクトを残しました。コーヒーのある空間、そこに集まってくる人たちの雰囲気が好きで、カフェでアルバイトをしていた学生時代。その頃に感じていた接客業のやりがいを思い出し、ここで働きたいという衝動に駆られたんです」

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どうしても働きたいと宗広さんは、会社員を続けながら週末だけLATTESTで働くように。最初の難関は、LATTESTが力を入れているラテアート。器用なほうではない上に、週に1回の店舗での実践だけではなかなか感覚が掴めず、ピッチャーを持ち帰りお風呂でも練習する日々が半年以上続いた。1年が経った頃、本格的にコーヒーについて学びたいと会社を辞めLATTESTに専念。焙煎を学び、コーヒーに関する知識と技術を深めていった。現在バリスタだけでなく、マネージャーとしてスタッフの育成も担当する宗広さん、仕事のやりがいや難しさについて尋ねると。


「LATTESTのスタッフは全員女性。大変じゃない?と言われることもありますが、人に恵まれていてそのストレスは全く。仕事でもプライベートでも、スタッフ同士コミュニケーションを活発に取っているからこそいいチームワークと雰囲気が出せる。以前は女性だからこそ、常にアンテナを貼っていろんなことに気づけていると思いますと話していたけど、女性だから特別なんてことはなくて、受け入れたり、助けあったり、目の前の人のために動ける人が多い。スタッフには、“常に見られている”というプロ意識を持って仕事に取り組むことが大切だと伝えています。カウンターの中に入ったらお客様からポジションはわかりません。皆同じ責任がある。もちろんトラブルやクレームは私や社長が対応しますが、プロ意識を高く持つことで店舗やLATTESTの魅力が増していくと思っています」

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今年の春から住まいを鎌倉へ移した宗広さん。生活の変化はもちろん、物理的に仕事場との距離を取ったことで心境にも変化が生まれた。

「以前は何かあればすぐ駆け付けられる距離に住んでいましたが、今はすぐに行けない。託したり、頼ることで、抱え込んでいた責任感の分散ができるようになりました。今の家は、朝日がしっかり入るので、すっかり朝型生活に。朝の時間を満喫できる余裕も出てきました。どんなに仕事で疲れて帰ってきても太陽の光を浴びるとリズムが整うから引っ越してきてよかったなと思っています」

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仕事とプライベートを切り分けるリフレッシュ方法がある。それは引っ越す前から続けているロードバイクだ。

「実家のある豊洲からお店までは電車で1時間ほど。オープン当初は9時出勤、23時退勤だったので、心も体もヘトヘト…少しでも早く家に帰りたいと併設の自転車屋さんに相談したら、ロードバイクを貸してくれて1時間かかる通勤時間が半分に。自転車で走っている時間は気持ちがいいですし、走っている時は仕事のことを考えなくなるので、心の面でもいい切り替えができます。引っ越してからも、お休みの日は息を切らしながら鎌倉の山を登り、海までサイクリングに行ってリフレッシュしています」


自転車以外にも、毎晩必ず湯船に浸かり、スチーマーを使って肌のケアをする。考え事をしている時は、本を読んで好きな作家さんの言葉からヒントを得たり、素敵だなと思う人の話を聞いたりと、宗広さんは、自分と向き合うケアの時間もルーティンとして大切にしている。

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「普段のケアでは、毎朝舌磨きをしています。2、3年続けていたら、ひどい風邪は引かなくなりました。それから年齢とともに髪質も変わってきたので、いいドライヤーを使ったり頭皮マッサージをしたりと、ヘアケアもきちんとするようにしています。最近仕事でボリビアに行っていたのですが、日本での生活とは全く違う環境での滞在だったので、帰国してcinqueを使ったら髪も元気にサラサラになり優しくリフレッシュできました」

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LATTESTで働き始めて8年、マネージャーというポジションで4店舗を見ている宗広さんは、今回ボリビアのコーヒー農園を訪ね、一粒のコーヒー豆が手元に届くまでを実際に見て体感したことで、新たな視点でコーヒーと向き合うようになった。そんな彼女がこれからも変わらず大切にしていきたいことは、素直でいること。美味しいとか、嬉しいことをきちんと言葉に出し、悲しい時は素直に悲しむ。喜怒哀楽の感情は素直に、感謝の気持ちを持って真面目にコツコツと続けていくことで、お店でもプライベートでも、心地よい場やコミュニケーションが築かれていくと確信している。

PROFILE

宗広裕美/むねひろゆみ 1987生まれ。大学を卒業後、医薬関連機関に入社し、データマネジメント業務に就く。その後「LATTEST」に転職しアルバイトを経て2016年に社員となる。現在は、東京ミズマチにオープンした「LATTEST SPORTS」など全店舗のスタッフの育成のほか、店舗開発にも携わっている。