Turning point in my life
Vol.7 ⾃分を変えるタイミング
/ 浅野美奈弥(モデル・料理家)
Turning point in my life
Vol.7 ⾃分を変えるタイミング / 浅野美奈弥(モデル・料理家)
MINAMI ASANO
Model, Culinary Researcher

まずは自分を知ることから始めてみる

彼女の素晴らしいところは、自分をよく知っていること。体の声や、心の声。自分を客観視できる力を身につけて、その声と正直に向き合っているから、いつもヘルシーな自分でいられるのだ。

16歳からモデル活動をスタートした浅野美奈弥さん。大学進学とともに上京し、モデルの仕事も増えていった。活動をしていく上で、欠かせないのがスタイルキープ。細くないといけない。食べてはいけない。その重圧を無意識に自分に課していたと当時を振り返る。

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「私は細くないから、オーディションに受からないと思い込んでいたり。食べるのが好きだったので、痩せにくかったり。体重の管理が難しくて、知識もないまま過剰なダイエットをして体調を崩してしまったんです。それから食やダイエットについて勉強をし食生活の改善をしました。勉強をしているうちに、食の大切さを発信していきたい。自分と同じような悩みを抱えているモデルさんたちもたくさんいるはずだから、そういう人たちをサポートしたいという思いが強くなり、料理家としても活動を始めようと決意しました。それが美菜屋のはじまりです」

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彩りや栄養バランスを考えて作られている美菜屋のケータリングは、フードスタイリストやダイエット検定一級、スポーツフードスペシャリストなどの料理に関する資格取得と、ケータリングに定評のある料理家さんのアシスタントに就き、お弁当作りの実践と仕事のノウハウを身に付けた、浅野さんだからこそ作れる特別なもの。知り合いに頼まれて自宅で作っていた10個のお弁当販売から、一般の人も気軽に購入ができる朝ごはんの販売窓口も併設した広いキッチンスペースのある場所に移動し規模を拡大。直感タイプと言うだけに改装と移転の決断は早かった。2019年から始まった美菜屋は今年で3年目を迎え、ケータリングサービスのほか、フードスタイリングや、レシピ提供も行っている。

「私は制限している自分より、好きなことをして好きなものを食べている自分の方が好き、体重は増えたけれど、今の自分の方が好き。自分にストレスをかけずに、楽しむことを大切にしています。“楽しむ”ことが、私の軸。そして心がヘルシーであること。食生活も体幹みたいに軸を作っているとぶれない。お酒も好きだし、お菓子も食べる、そうしても大丈夫なように、バランスの良い食生活を日々とることを軸にして、食べすぎたなと思ったら走ったり動いて消化するようにしています。走ることでストレス発散もできますしね。今は、プライベートと仕事の境目がなく、すべて一環している感覚。そういう生活の中でも、好きなことだけを選んでいるので、やることやること全部楽しいです。自分に正直でいる、それが私なりの“楽しみ方”に繋がっているかなと思います」

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彼女の価値観を変えたのは、ランニングとの出会い。5年前、モデルに復帰してすぐ引き受けたマラソン大会へ参加する企画の仕事で、フルマラソンを走りきった。これまでジョギングすらしてこなかった自分が、初めてマラソンに挑戦して完走できた。その成功体験が、彼女の自信と新しいことを始める後押しにつながった。

「自分を変える良いタイミングと思って引き受けました。体も壊し、精神的にも元気がなかった自分を変えたいと思ったのが一番のきっかけ。ちょうど、食のことを仕事にしようと考え始めたのもその頃で、完走できたら新しいことをスタートできるかもしれないという思いもありました。ハーフを走るオファーでしたが、ほかのランナーが走っている中、途中で終わる感覚が嫌で、フルマラソンを走ろうと決めて出場し無事完走。そしたらすごく自分に自信が持てて、新しいスタートをきることができたんです。それ以来大会には8回出場していて、今はサブ4を達成するのが目標です。」

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走ることを通して、より自分の長所を伸ばし、欠点からは上手に目を逸らす方法を知った浅野さん。頭ではわかっていても、なかなかそう上手くはできないことを、すらすらとやり遂げてしまう力、直感的に生まれる新しいものにチャレンジするバイタリティを彼女はナチュラルに身につけている。

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一つ一つの行動が

心ときちんと繋がっている


「走っている時って、前向きな気持ちになるんです」と浅野さんは軽やかに話す。その一言を聞いて彼女の在り方や言動、すべてに合点がいく。

「週2、3回は走るようにしています。走っている時は音楽を聴いたり、それでも飽きてくると『妄走』という実況してくれるアプリを使って。このアプリ面白くて、ペースが落ちてくると、おーっと疲れてきたか?とか言ってくれる。そうやってツールを使ったり、走る場所を変えたりして。考え事をしたい時は、何も聞かずに無で走ります。走っている時は気分が前向きになるので、ポジティブな考えしか出てこない。友達と打ち合わせランをしたりすることもあります。走りながらミーティングすると互いに良いマインドになって、前向きな答えやアイディアが出せる。ランニングは、身体のケアだけでなく、メンタルケアにも繋がっていると思っています。」

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走った後は、疲労を残さないよう充分なストレッチと、なるべく早くタンパク質を摂ることを欠かさない。外側のケアはもちろんのこと、内面=食のケアをすることも、健康な身体作りや綺麗なスタイルを保つことと、直接的に繋がっていると実感できるから。2019年からは、友人の三原勇希さんと共にランニングコミュニティ『GO GIRL』を発足。浅野さんが走ることで変われた体験や、走ることの楽しさを伝えている。

「現在メンバーは60人弱。1人だと始められなかったことや、できないことも、みんなでやるとできるようになる。〇〇ちゃんも走っているから私も走らなきゃとか、次の練習までに1人でも走ろうとか、練習会がなくても近所のメンバーで集まって走ったりと、みんなが刺激し合っている。大人になってから同じ趣味や目標を持った友達ができるって嬉しいですよね。外面的な部分でも、最初は地味なタイプの子が、どんどん可愛くなっていったり、走る靴じゃなかったり、荷物をたくさん持ってきていた子も、タイツ一枚で、スタイリッシュに変わったり。走ることでスタイルが変わって、自信がついていく。そういうみんなの成長過程見れるのも嬉しいですね」

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農家を訪ね、傷ついていたり曲がっていたりして出荷ができない野菜を使って料理をしたり、家庭で出るサランラップのゴミを減らそうと、蜜蝋ラップを作り店頭で販売するなど、自分にできることをできる範囲で、真摯に取り組んでいる。食、ランニング、環境問題。これら彼女の行動はすべて、自分が楽しいということを前提に選択し実行している。楽しみ、好きなことを続けているから、いつも刺激がそばにある。やりたいことが湧き出る。

浅野さんは、とにかく純粋で、嫌味のない前向きさと勢いがある。一歩踏み出せずに躊躇してしまうことがあった時は、美菜屋のお弁当を食べて勇気と元気を分けてもらおう。

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PROFILE

浅野美奈弥/あさのみなみ 1991年生まれ、北海道出身。学生時代からモデル活動を始め、DJなど幅広く活動。体調を崩したことをきっかけに、スポーツと食で健康的な生活を見直すことを決意し、料理家を目指す。モデルを続けるかたわら、2019年、ケータリング「美菜屋」を開業。